| MU 'Chair Girl / Let's Get Sick' Tigersushi これがリリースされてから早くも2年が経ってしまったが、ダンス・ミュージックの世界に突然の大きなインパクトを残した(と思われる)1枚。ハウス・ミュージック界の奇才モーリス・フルトンが、MUこと日本人女性カナモリ・ムツミと一緒に、ただの遊びとしてふざけて作ったという曲が収められている。当初はリリースする気などなかったらしい。Aサイドはスローだがベースが強烈なジャンク・パンク・ファンク。Bサイドは発狂の極みだが、奔放なボーカルがどこか爽快な後味を残す。 'Chair Girl'で"Leave me alone!(ほっといてよ!)"と言っているように、MUは音楽の世界のあれこれには興味がないようであり、本人も音楽はほとんど知らないと言う。結果的にハウスのユニティの感覚よりも、気ままに自分らしくあることを選び取ったようでもある。・・・とにかくそんなような評価は本人にはどうでもいいことに違いないのだが。 MUは歯に衣を着せることをしない。思ったこと以外は言いたくないのだ。風俗で働いていた過去もバイセクシャルであることも隠さない。パリス・ヒルトンやマイケル・ジャクソンを擁護する。「『なんだあの女は?』と思われるのが好き」とも言う。全く人間のタイプが違っていたとしても、周りを気にせず自分そのままであることを貫く姿勢、ある意味孤高ともいえる精神性が、自分の感情を惹きつけてやまない。 LCD SOUNDSYSTEM 'Losing My Edge' DFA LCD SOUNDSYSTEM 'Give It Up' DFA LCD SOUNDSYSTEM 'Yeah' DFA どうにもこうにも音楽の消費のサイクルが早すぎる。12インチで流通し、口コミやDJを介して広まっていくまではいいが、CDでまとめられた音源、それに伴う雑誌でのプロモーション・・・それから1年も経てば、まるでそれはなかったものであるかのような扱いを受けることも。だが、すべてのレコードはそれを初めて聴いたときにその人にとっての新譜となるのだ。また、ずっと放ったらかしのレコードを久々にちゃんと聴いたら「お、いいな」と思う、そのときだって新譜に出会う瞬間といえる。 LCDサウンドシステムのジェイムズ・マーフィーは音楽ファンであることに自覚的すぎるきらいがあるため、消費サイクルの憂き目にあいやすいのではないだろうか。なんというか、幻想に寄りかかるということをまるでしないのだ。この3枚のシングルはアルバムでまとめて聴くことができるが、その形態やリリース順に目を向けると、音楽ファンとしてのジェイムズのこだわりが表れている「初めの3枚」であるといえるだろう。1枚目はまあ日本盤を買って歌詞を読んでもらうしかないな、これは(歌詞が載っているかどうかは未確認です)。要は「イケてない」音楽マニア賛歌。まるでこういうのを出す時代とタイミングを心得ているようでもある。2枚目のみ7インチでのリリースで、これはパンク・ロックやロックンロールへのオマージュか。3枚目はレコードの溝の内側に"Not as good as Loosing My Edge(「ルージング・マイ・エッジほどは良くない」)"と彫られているが、いやこれがズバ抜けて良い。DJならついかけたくなってしまうのでは。 今回のレビューはこのように、すでに色々なところで触れられているであろうありがちなものが多くなってしまっている。でも1、2年経ってからゆっくり振り返るのも、冷静な視線を獲得できたり、違った魅力が見えたりしていいのではないだろうか。またここで言いたかったのは、もしCDを聴いて何か引っかかるものがあれば、その曲のオリジナルでのリリース形態(7インチ、12インチ・シングル)に目を向けてみてはどうかということ。良いレコードにはきっと何らかのこだわりや意図が隠されているはずである。 !!! 'Pardon My Freedom' Touch And Go "like I give a fuck like I give a shit like I give a fuck about that shit, like I give a fuck about that motherfucking shit"というミもフタもないサビを擁する2004年のアンセム・・・かどうかはわからない。最近はクラブからめっきり足が遠のいているので・・・まあ言ってしまえば、これで盛り上がっていてほしいなぁと単純に期待するにはいささかわかりやすすぎるフリークアウトっぷりではある。なんとなく自分の中では、みんなで"Like I give a fuck"とか"Like I give a shit"とか叫んでいてほしいのだ。というわけで、2004年・夏の仮想アンセムはこれに決定。この辺のバンドらしく歌詞はなかなかシリアスな題材を扱っていたりする。 THE STREETS 'Fit But You Know It' 679 DIZZEE RASCAL 'Dream' XL Recordings イギリスで最も新しく、また最も若いシーンといわれるグライム(grime)。だがそこにも英国伝統のユーモアはしっかりと存在している。そんな2枚を紹介したい。 ザ・ストリーツことマイク・スキナーのこのシングルは、トラックがロックというかもはやポップス。シンプルなループで成り立つバックトラックの上で、イギリスの若者の日常をリアリスティックに描写するさまは、ブラーの'Park Life'に例えられるほどだ。ストリーツの音楽は、グライムの本流のシーンとは毛色を異にするが、アンダーグラウンドのアーティストをフック・アップすることも忘れない。ここでフィーチャーされているのは、Kano、Donae'o、Lady Sovereign、Tinchy Stryder。リリース元の679はイギリスのアンダーグラウンド・シーンの牙城なのだ。679直営の、ホワイト盤がいち早く手に入るレコード・ショップが、昔住んでいたロンドンのフラットの近所にあったのだが、店員があぶない雰囲気だったのであまり近寄らなかった。いま思えばあのシーンがここまでのものになったのだという感慨がある。グライムのアーティストの情報はまだあまり日本に入ってきていないので、サイトと共にいくつか紹介する。 Kano http://www.ka-no.com/ Kanoはディジーに続くグライム・シーンの注目株。 Lady Sovereign http://ladysovereign.com/ いまだ10代のLady Sovereignの姿はここで確認できる。容姿はカワイイがライミングはハード。 679 Recordings http://www.679recordings.com/ レーベル・サイト ちなみに「グライムのスター」ディジー・ラスカルの'Dream'はなんと、元ダムド、Captain Sensibleによる全英ナンバーワン・ソング'Happy Talk'をサンプリングしている。 |
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